「ラーメン屋さん」の倒産が前年同期比3.5倍に急増
食材価格・光熱費高騰で年間最多ペース
9/12(火) 13:02配信 東京商工リサーチ
2023年1-8月の「ラーメン屋さん」の倒産(負債1000万円以上)が
28件(前年同期比250.0%増)に達し、
前年同期の3.5倍と大幅に増えていることがわかった。
コロナ禍の影響に加え、物価高、人件費上昇も直撃し、
国民食として人気の高いラーメン屋さんが苦境に立たされている。
ラーメン屋さんの倒産は、
街から人の姿が消えたコロナ禍の当初、
緊急事態宣言に伴う休業や時短営業などで、
2020年1-8月は過去最多の31件発生した。
ただ、年後半に入るとコロナ関連支援が広がり、
2020年年間(1-12月)では、倒産は38件にとどまった。
その後も、コロナ関連支援で倒産は抑制され、
2022年年間の倒産は最少の21件に減少した。
ところが、2023年に入るとコロナ関連支援の縮小・終了に加え、
食材価格や光熱費の高騰、人件費の上昇が深刻さを増し、
それまでとは様相が一変。
ラーメン屋さんの倒産は急増に転じている。
資本金別では、「1千万円未満」が26件と9割(92.8%)を占め、
従業員別でも「5人未満」が25件と約9割(89.2%)にのぼり、
小・零細規模のラーメン屋さんの息切れが目立つ。
ラーメン屋さんは、大規模な調理設備を必要とせず、
オーダーから提供まで短時間での対応が可能だ。
また、お客さんの滞在時間は短く、
高い客回転率により小規模店舗の限られた客席数でも対応しやすく、
開業資金も少なくて済む。
加えて、若者を中心に幅広い年齢層でファンが多いため、
新規参入が多く、もともと競合が激しい業界でもある。
こうしたなかで、インバウンド需要への対応や有力チェーン店など、
ブランド力の付加価値で高価格帯でも勝負できるラーメン店がある一方、
競争力が乏しく、十分な価格転嫁ができない店舗も少なくない。
さらに、昨今は、ロシアのウクライナ侵攻による小麦価格の上昇に加え、
原油価格や様々な食材、電気・ガスなどの光熱費も上昇。
また、人手不足に伴う人件費高騰など、急激なコストアップに見舞われ、
体力がぜい弱な街のラーメン屋さんの経営は厳しさが増している。
※本調査は、日本産業分類の「ラーメン店」の2023年(1-8月)の倒産を集計、分析した。
ラーメン店倒産は前年同期の3.5倍、コロナ関連が5割超
2023年1-8月の「ラーメン屋さん」の倒産は、
28件(前年同期比250.0%増)と急増。
すでに2022年の年間倒産(21件)を上回り、
2021年の年間倒産に並んだ。
8月までの月平均3.5件ペースで推移すると、
2009年以降の15年間で最多だった
2013年の42件を超える可能性も出てきた。
2023年1-8月のラーメン屋さんのコロナ関連倒産は15件(前年同期6件)で、
ラーメン屋さんの倒産の半数以上(構成比53.5%)を占める。
アフターコロナに向かうが、物価高が続くなかで
ラーメン屋さんがコロナ禍の影響から抜け出すには、
まだ相当な時間がかかりそうだ。
規模別 小・零細規模のラーメン屋さんが中心
資本金別では、
「1千万円未満」が26件(前年同期4件、構成比92.8%)で、
ラーメン店倒産のほとんどを占めた。
内訳は、「個人企業他」が14件(同1300.0%増、同1件)
「1百万円以上5百万円未満」10件(同400.0%増、同2件)
「1百万円未満」2件(前年同期0件)。
従業員数別では、
最多が「5人未満」の25件(前年同期比525.0%増、前年同期4件)で、
構成比は89.2%を占めた。
「5人以上10人未満」(前年同期3件)
「10人以上20人未満」(同ゼロ)
「20人以上50人未満」(同1件)がそれぞれ1件だった。
ラーメン屋さんの倒産は、体力に乏しい小・零細規模が中心で、
物価高や人件費上昇による収益悪化の影響が深刻さを増している。
地区別 西日本で倒産目立つ
地区別では、最多は中国の8件(前年同期2件)だった。
以下、近畿の5件(同1件)、関東(同4件)と中部(同ゼロ)の各4件と続く。
都道府県別では、広島が最多の4件(同ゼロ)。
次いで、大阪と福岡の各3件、東京と京都、島根、山口の各2件の順。
“博多ラーメン”の本場、福岡でもラーメン屋さんの倒産が増え、
西日本を中心に倒産が発生している。